「……準備もできたし、そろそろ行くか。」
イドがそう言うと、レイとリーリアが頷いた。
「はやくメロンソーダ飲みたいね! お兄ちゃん。」
「う、うるさいなあ、お前だってマカロン好きなくせに。」
「お兄ちゃんも甘いの好きなくせに!」
イドは兄妹の会話を後ろで聞きながら微笑んでいた。




広間にて。
「流石に王族貴族の集まる会となると……すごいなあ、豪華だ。」
レイが思わず口にする。確かに、王宮に仕えるイドでさえ見たことがないほど豪華だったので、レイが驚くのも無理はなかった。
と、突然黄色い歓声が聞こえてきた。
「見て、あの人……剣豪ダロンのご子息のイド様ではありませんか?」
「ええ、そうに違いありませんわ! 噂に違わずお美しい。」
「イド様!わたくしと一緒に踊りましょう。わたくし、イド様が出席するかもしれないというお達しを見て、ドレスを新調しましたのよ。 」
剣豪の息子というだけでこれほどモテるとは、彼も思っていなかったであろう。
「イドって、すごくモテるんだね……」
「あのドレス、シャネロのドレスだ……。 私もイドと踊りたかったけど……無理そうかな……」
「リーリアにしては往生際がいいね。……それほどレベルが高いってことなのかもしれないけど。」
イドに群がる女性たちを眺めている2人。そのうち、イドが声をあげた。
「すみません、みなさん。申し訳ありませんが、私には先約がございます。」
そう言うと、イドはリーリアの手をとった。驚くリーリアに微笑みかけると、流れる音楽に合わせてステップを踏んだ。
イドのリードが上手かったのか、余り踊ったことがないリーリアもスムーズに動いている。
「ど、どうしてイド様はあんな平民と踊るのですか? それもまだ子供! 」
「もしかして、イド様はロリコンなのでは……」
「そもそも、ただの平民がなぜここに居るのです? おかしいですわ!」
イドはそんな声を聞こえないかのように、リーリアと踊っている。
「平民平民って、貴族の人は何を考えてるのかわかんないや。やっぱり貴族は苦手だなあ。アリーシャさまは優しいけど。」
リーリアは口を尖らせながら呟いた。レイも平民と呼ばれたことが不快だったのか、黙ってしまった。
一通り踊り終えると、イドとリーリアはレイの元へ戻った。
「お兄ちゃん、やけ食い?」
レイは置かれているチョコレートを食べている。
「別に。平民とか呼ばれて拗ねてないし……チョコレートが美味しかっただけだし……」
「すまない、レイ。俺のせいで、肩身の狭い思いをさせたな。」
「え、いや、そんなのいいよ。イドは悪くないんだしさ。」
レイは少し俯いていて、表情は確認できないが、声がいつもより低い。
「お兄ちゃん……」
「そうか、なら一緒にマカロン食べに行こう。」
突然、イドが真顔で誘ってきた。これにはレイもたじろぐ。
「え? いや、え?」
「いいから行くぞ、リーリアも。」
イドは半ば無理矢理2人をマカロンが置いてあるテーブルまで連れてきた。
「いや、やっぱりマカロンは美味いな! この甘さがたまらない!」
「丸くてちっちゃくて見た目も可愛いね!マカロンタワー、初めてみた!」
「僕もマカロンは美味しいと思う!見た目も味も文句なしだよね。」
マカロンを前にするとはしゃぐ3人。かなり危ない人達である。
「イド、僕たちが落ち込んでたから、ここまで連れてきてくれたんだよね? ありがとうイド。」
「お兄ちゃんと違って、気配りができるんだよ! イド大好き! 」
「レイも優しいだろ?」
「優しいけど、私のオヤツ勝手に食べるもん。」
あはは、と三人の笑い声が響く。
「あら? ここにいたのですね、3人とも!」
そこへ現れたのは、国花があしらわれたドレスを身にまとったアリーシャだった。
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