光と生命が溢れる世界である表世界。そこには「くそもん」と呼ばれる生き物がたくさんいた。その個性的な見た目と生態に、たくさんの人間が魅了されていた。
そのくそもんに魅力された人間たちの中でも、彼らとの共存をいち早く進めた国が「リイン」だ。
リインの姫はアリーシャといい、あまり頼りにならない王の代わりに国の政治を行い、かなり人望も厚く、多くの国民から信頼されていた。
その昔、リインは繁栄のためならなんでもする、非道な国だった。それを人々の気持ちと生活を一番に考える国にしたのは、アリーシャだったのだ。



「今日もお花が綺麗だわ。……彼に持って行ったら喜ぶかしら!」
昼下がり、城の庭園で花を摘み取るアリーシャ。その後ろから声をかける人影が。
「随分楽しそうだが、何をしてるんだ?」
微笑みながら声をかける青年。彼はイド。近衛兵として城を警備しているが、実際はただのアリーシャの幼なじみである。剣豪と呼ばれた彼の父は、リインの近衛兵として王を守り続けていたから、イドとアリーシャは常に一緒に居るようになった。
「えっ、あ、イド!?えっと……このお花を、貴方にと思ったのですわ。いけない?」
頬を赤らめながら話すアリーシャは、一国の姫という風貌ではなく、年相応の少女であった。
「そんなことないさ、ありがとう。家の花瓶にでも飾っておくよ。」
笑顔で花を受け取るイド。イドは気づいていないが、アリーシャは彼に対し密かな恋心を抱いていた。
「そうだわ。今日、近隣の国王や重臣、貴族の方たちを招いた舞踏会があるの。イドも警備で来てくれるのよね?」
「もちろんだ。近衛兵という肩書きがあるから、嫌でも行かなくちゃならない。」
イドは冗談めかしてそう話した。
「そ、そうですわね。……もしよければ、その……剣豪の息子として、会に出席していただけませんか?もちろん服は用意してありますし。」
「折角の誘いだが、俺にはそうやって出る資格はない。大人しく裏口の警備でもしてるよ。」
「わたくしの頼みでも、ですか?」
アリーシャは、真剣な瞳で訴える。その姿にイドは目を丸くした。
「姫が、出て欲しいと?」
「そうですわ。どうしても出ないというなら、国王としての命令で無理矢理にでも出してやりますわ!」
「……わかった。アリーシャがそこまで言うなら、俺も出席する。」
その言葉を聞いたアリーシャは、今日一番の笑顔を見せた。
「ありがとうイド! とっても嬉しいですわ!」
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